FIFA女子ワールドカップ 2023(英: FIFA Women's World Cup 2023)は、2023年7月20日から8月20日まで開催された女子サッカーの国際大会であるFIFA女子ワールドカップの第9回大会である。今大会から本大会の出場チーム数が24から32へ拡大する。決勝でスペインがイングランドを1-0で下し、初優勝を果たした。スペインは2022年8月に2022 FIFA U-20女子ワールドカップ・10月に2022 FIFA U-17女子ワールドカップで優勝しており、日本に次いで女子サッカー史上2か国目となる国際サッカー連盟(FIFA)主催の3つの世界選手権大会を全て制した国となった。またドイツに次いで、史上2か国目となる男女のワールドカップ優勝国ともなった。

開催国の決定

2019年3月19日に国際サッカー連盟(FIFA)は、開催地として立候補の書類を提出した国別協会が9件あることを発表した。その後、2019年9月3日の発表では引き続き立候補している国別協会は8件となっており、2019年12月13日の発表では引き続き立候補している国別協会は4件(うち1件は2か国共催)となっていた。最終的な投票の時点では2件(うち1件は2か国共催)の立候補が残っていた。

最終決定の時点で立候補を継続
  • オーストラリア・ ニュージーランドの共催 - オーストラリアはAFCアジアカップ2015の成功を受けて立候補の意思を示し、またニュージーランドも立候補の意向を示していた。本大会出場チーム数が32に拡大されることを受け、共催で立候補する方針を示した。
  • コロンビア
立候補見送り・取り下げ
  • タイ - 検討はあったものの立候補はせず。
  • ボリビア - 2019年9月3日の発表において立候補国に名前がなかった。
  • ベルギー - 2019年3月19日のFIFAの発表では立候補国に名前がなかったものの、立候補国に加えられる可能性があるとの報道があった。しかし2019年9月3日の発表においても立候補国に名前はなく、立候補は見送られている。ベルギーサッカー協会は、立候補の要項をFIFAに問い合わせたのは事実だが、2023年大会での立候補を目的としたものではなかったと発表している。
  • アルゼンチン - 2019年12月13日のFIFAの発表において立候補国に名前がなかった。
  • 南アフリカ共和国 - 2019年12月13日のFIFAの発表において立候補国に名前がなかった。同国協会は国内リーグの強化が優先であること、また次回(2027年)大会に立候補する可能性はあることを示している。
  • 韓国( 北朝鮮との共催も検討) - 2019年12月13日のFIFAの発表において立候補国に名前がなかった。朝鮮半島情勢の悪化や、FIFAの規定に抵触せずに運営することが難しい見通しから立候補を取り下げた。
  • ブラジル - 2020年6月8日にブラジルサッカー連盟が立候補の取り下げを発表した。
  • 日本 - 当初は2019年大会の立候補を検討していたが、同年のラグビーワールドカップ及び翌年の東京オリンピックが開催されるため方針を転換した。後述の投票よりも前の2020年6月22日に、日本サッカー協会が立候補取り下げを発表した。

開催国は2020年5月に決定の予定であったが、2019年10月24日に行われたFIFAの理事会において、開催地を2020年6月に決定することを正式に決めた。しかし新型コロナウイルスの世界的大流行の影響でFIFA総会が同年9月に延期となった。

2020年5月15日、FIFAは開催国の決定を6月25日に行うFIFAカウンシルで決定すると発表。6月上旬に各招致地から提出された招致ブック(開催提案書)や視察をもとに評価レポートを公表の上、FIFAカウンシルメンバーによる投票で決定する予定と告知した。

6月25日のFIFAカウンシルメンバーによる投票の結果、開催国がオーストラリア・ニュージーランドに決定された。

出場国

2020年12月24日に、FIFAは大陸連盟別の出場枠を発表した。

  • 「出場枠数」の「H」は開催国枠、「P」は大陸間プレーオフ枠。
  • 「FIFAランク」(FIFA女子ランキング)は、組み合わせ抽選に用いる2022年11月13日付けのものを表す。
  • 「○」は大陸間プレーオフに勝利の上、出場が決定したチーム。

出場選手

大陸間プレーオフ

プレーオフは以下の方式で行われ、3チームが本大会出場権を得る。

  • 出場全10チームを後述の方法により3グループに分け、それぞれノックアウトトーナメントで対戦する。各グループの勝者が本大会出場権を得る。なお、同一の大陸連盟のチームは同じグループに入らない。
  • 10チームのうち第1シードから第4シードを定め、それが組み合わせに反映される。シード順はFIFA女子ランキングによって決定することを原則とするが、同一の大陸連盟からは最大1チームしかシードに選出されない。
  • 組み合わせは以下の通り。
    • グループ1(3チーム):第1シードのチームはこのグループに割り当てられ、1回戦免除。1回戦では残る2チームが対戦し、その勝者が第1シードのチームと2回戦で対戦する。
    • グループ2(3チーム):第2シードのチームはこのグループに割り当てられ、1回戦免除。1回戦では残る2チームが対戦し、その勝者が第2シードのチームと2回戦で対戦する。
    • グループ3(4チーム):第3・第4シードのチームはこのグループに割り当てられ、1回戦ではシードでないチームと対戦。1回戦のそれぞれの勝者が2回戦で対戦する。
  • 会場はオーストラリア及びニュージーランドで開催(本大会の開催地でもある)。また、1回戦免除となる2チームは、オーストラリアもしくはニュージーランドとの親善試合が組まれる予定である。

当初は上記の通り予定されていたものの、開催地については最終的に全試合がニュージーランドで実施されることとなった(親善試合を開催国として行うチームもニュージーランドのみとなる)。

組み合わせ抽選

本大会の組み合わせ抽選は、2022年10月22日 19:30 NZDT(UTC 13)にニュージーランドのオークランドにあるアオテア・センターで行われる。方式は以下の通り。

  • 抽選では、2022年10月13日付のFIFA女子ランキングに基づき、32チームが4つのポットに振り分けられる。ポット1には、共催国であるニュージーランドとオーストラリア(それぞれA1、B1の枠に自動的に入る)と、ランキングの上位6チームが入る。ポット2には次の上位8チームが入り、ポット3にはさらに次の上位8チームが入り、ポット4には残る5チームならびに大陸間プレーオフの勝者3チームの枠が入る。
    • 組み合わせ抽選の時点では、予選のうち大陸間プレーオフのみは完了しておらず、大陸間プレーオフからの出場チームが未定のまま抽選する。
  • 大陸間プレーオフからの出場チームを除いたチームは、UEFAについては各グループに1チームか2チームが入り、UEFA以外の大陸連盟については各グループに最大1チームしか入らない。
    • ただし大陸間プレーオフからの出場チームについては、どの大陸連盟のチームが進出するかの可能性が多いため、上記の重複への配慮を緩和し、「同一のグループに、同じ大陸連盟のチームは最大で2チームしか入り得ない」という条件のみを設けるものとする。(なお、この条件に実際に影響されるのはUEFAのみであり、「大陸間プレーオフでUEFAのチームが入ったグループの勝者が入る枠は、UEFAのチームが2チーム入っているグループと一緒に割り当てない」という対応を取る。)

抽選のポットは以下の通り(かっこ内は2022年10月13日付けランキング)。

色は以下の通り:  UEFA   AFC   CAF   CONCACAF   CONMEBOL   OFC 

公式球

アディダスによる公式試合球の名称は「OCEAUNZ (オーシャンズ)」に決定した。共同開催を記念したデザインとして、名前は今回の開催地域であるオセアニア(OCEANIA)と、オーストラリア(AU)とニュージーランド(NZ)のイニシャルが組み合わされている。

会場

オーストラリアとニュージーランドは、FIFAに提出した入札書でトーナメントのために12の開催都市にまたがる13の会場を提案し、少なくとも10のスタジアム(各国で5つ)を使用することを提案した。

2021年3月31日、FIFAは最終的な開催都市と会場を発表した。オーストラリアでは5都市・6スタジアムが使用され、ニュージーランドでは4都市・4スタジアムが使用される。オークランドのイーデン・パークで開幕試合が開催され、シドニーのスタジアム・オーストラリアで決勝戦が行われる。

スケジュール

試合日程は2021年12月1日にFIFAから発表され、キックオフ時間は発表されなかった。ニュージーランドによる大会の開幕戦は2023年7月20日にイーデン・パークで行われる。一方、オーストラリアでの開幕戦は、同日にシドニー・フットボール・スタジアムで開催される。グループステージの試合は共催国がそれぞれ4つのグループを主催し、3位決定戦は2023年8月19日にラング・パークで行われ、決勝戦は2023年8月20日にスタジアム・オーストラリアで行われる。

試合日程の構造上、オーストラリアは1つの国で全ての試合を行うことが確定している唯一のチームである。

参加国は、4チームによる8グループ(グループAからH)に分けられ、各グループのチームはラウンドロビン方式で対戦し、上位2チームが決勝トーナメントに進出する。

グループステージの各グループは、以下の開催国に割り当てられる。

  • グループA、C、E、G:ニュージーランド(オークランド、ダニーデン、ハミルトン、ウェリントン)
  • グループB、D、F、H:オーストラリア(アデレード、ブリスベン、メルボルン、パース、シドニー)

ラウンド16から準決勝までは、グループA・C・E・Gのチームと、グループB・D・F・Hのチームとの間での対戦は行われない。またそのため、この間での国をまたぐ移動は、ラウンド16でグループE・Gから勝ち上がったチームの対戦がオーストラリアで行われるほかは存在しない。決勝と3位決定戦はオーストラリアで行われるため、ニュージーランドで準々決勝を勝利したチームは、準決勝ののちにオーストラリアへ移動する。

グループステージ

順位決定方式

各グループにおいて、2チーム以上の勝ち点が同じ場合は以下の優先順位で決定する。

  1. グループ内での得失点差
  2. グループ内での総得点
  3. 当該チーム間での勝ち点
  4. 当該チーム間での得失点差
  5. 当該チーム間での総得点
  6. フェアプレーポイント(警告・退場処分の数による)
  7. 抽選

グループA



グループB



グループC



グループD



グループE



グループF



グループG





グループH




決勝トーナメント

トーナメント表

ラウンド16








準々決勝




準決勝


3位決定戦

決勝

優勝国

表彰

出典: FIFA

統計

総合順位

挿話

観客動員数と視聴率

今大会は約200万人の観客がスタジアムに詰めかけ、観客動員数記録を塗り変え、最終的な集計数は197万8274人にまで上がった。開催国のオーストラリアは史上初の準決勝進出をかけたフランスとの準々決勝で、地元放送局の6歳から39歳の視聴率は驚異の91.2%となった。中国は単独の試合としては世界最高の視聴者数を記録し、5,390万人もの視聴者がイングランド戦を観戦。優勝したスペインでは560万人が決勝を視聴し、最高視聴者数は740万人に。これはスペインにおける女子サッカーの試合のテレビ視聴者数としては史上最高記録となった。

歴史的敗退

ニュージーランドが開催国としては史上初のグループステージ敗退となった。また、全大会出場かつ決勝トーナメントに進んできたドイツも初のグループステージ敗退となった。この様にポット1の国が2つも敗退するのは史上初であり、他にもFIFA女子ランキング1桁の国ではカナダとブラジルもグループステージ敗退となった。前回大会の女王アメリカも決勝トーナメント1回戦で敗退となり、初めて4位以下となった。反対に、2015年カナダ大会で決勝トーナメントの枠数が16となってから、今大会アフリカは史上最多の3か国が決勝トーナメントに進出した。

判定アナウンス

VARの結果を主審がマイクを通じて場内に説明する試み。FIFAクラブワールドカップ2022、2023 FIFA U-20ワールドカップで試験的に導入され、年齢制限のないワールドカップ大会で男女を通じて初めて採用した。従来は大型ビジョンやテレビ画面に判定内容が表示されていたが、主審が理由を直接伝えることで、ファンがより容易に理解できることが期待されている。

ヒジャブの着用

モロッコの選手が一人、韓国との試合において頭部を覆うヒジャブ(スカーフ)を着用してプレーした。これは同大会で初めての事であり、またこの試合でモロッコはアラブで最初に勝利した国となった。

日本人選手や日本代表サポーターのマナー

今大会でも日本人サポーターや日本人選手の試合後のお辞儀やロッカー清掃は話題となった。加えて、今回は山下良美主審、坊薗真琴副審、手代木直美副審の日本人審判団がロッカールームのボードに「ARIGATOU」とメッセージを残したことが伝えられ、世界から好意的な反応が寄せられる出来事もあった。FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は自身のインスタグラム上で「準々決勝のスウェーデン戦では惜しくも敗戦に終わったが、今回の大会が史上最高のFIFA女子ワールドカップになったことへの貢献は、フィールド内外で誰もが忘れない」と、ピッチ内外で模範的な行いを見せた同代表に異例とも言えるメッセージを綴った。

全世代制覇

優勝国となったスペインは、2018 FIFA U-17女子ワールドカップ、2022 FIFA U-17女子ワールドカップ(2連覇)、2022 FIFA U-20女子ワールドカップで優勝しており、女子ワールドカップ全カテゴリーを制した史上2か国目の国となった。また最優秀若手選手賞に輝いたサルマ・パラジュエロは、2018 U-17女子W杯と2022 U-20女子W杯の優勝メンバーであり、個人で全カテゴリー制覇を成し遂げた史上初の選手となった。

放映権

本大会を巡って、FIFAと各国の放送局の間で放映権料についての軋轢が生じ、開催直前まで本大会を放送するテレビ局が決まらないという事態が発生した。

これはFIFAが女性選手の待遇改善を目的として、本大会の賞金総額を前大会からほぼ4倍となる1億1000万ドル(約158億円)とし、これをテレビの放映権料で賄うつもりだったためとしている。

このため、日本やヨーロッパなどといった放送局との交渉において、FIFAから提示された金額を巡って難航し、FIFA会長のジャンニ・インファンティーノは「過去の偉大な女子W杯選手と世界中の女性への侮辱だ」などと批判した。

なお、ヨーロッパの主要国(ドイツ、イギリス(イングランド)、フランス、スペイン、イタリア)を含む大半の国では2023年6月14日にFIFAと欧州放送連合の間で交渉がまとまり、加盟国の公共放送などで放送されることが決定した。

日本については大会直前になっても本大会を放送するテレビ局が決まらないという事態が続いていたが、開幕1週間前の2023年7月13日になってFIFAと日本放送協会(NHK)の間で交渉がまとまり、同局にて放送されることが決定した。総合テレビとEテレ、BS1にて日本戦の全試合を放送するほか、BS1では開幕戦と決勝戦も放送する予定としている。また、FIFA直営の動画配信サービスであるFIFA でも日本語実況解説付きで全試合ライブ配信することが同月19日に発表された。FIFA の日本語実況担当者はFIFA側からは明らかにされていないが、フットメディア所属の複数のフリーアナウンサー(永田実、原大悟、福田浩大、小林惇希、藤田崇寛、瀬﨑一耀)が自らのプロフィールやSNSでFIFA での実況を担当していることを明らかにしている。

FIFAは放映権による収入を合計3億ドル(約417億円)と見込んでいた。しかし、実際には各国のテレビ局との交渉において当初の提示額を下回る金額での契約が相次ぎ、アメリカの経済紙であるウォール・ストリート・ジャーナルは目標額を1億ドル(約139億円)以上も下回った可能性が高いと報じた。

大会公式スポンサー

以下のスポンサーは今大会開幕時点のもの。

FIFAパートナー

  • アディダス
  • コカ・コーラ
  • 大連万達グループ
  • 現代自動車グループ
  • カタール航空

FIFA女子サッカーパートナー

  • Visa
  • Xero

FIFA女子ワールドカップスポンサー

  • アルゴランド
  • ブッキングドットコム
  • バドワイザー
  • シスコシステムズ
  • グロバント
  • マクドナルド
  • 蒙牛乳業
  • パニーニ・グループ
  • ユニリーバ
  • Team Global Express

FIFA女子ワールドカップサポーター

  • イタウ・ウニバンコ
  • モントリオール銀行
  • 中央広播電視総台(CMG)
  • Claro
  • オーストラリア・コモンウェルス銀行
  • Estrela Bet
  • フリトレー
  • GEICO
  • ウブロ
  • Inter Rapidisimo
  • オプタス
  • ジェイコブス・クリーク
  • TAB
  • ヤディア

脚注

注釈

出典

外部リンク

  • 公式ウェブサイト (日本語)

NADESHIKO JAPAN|FIFA 女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド 2023 JFA|公益財団法人日本サッカー協会

NADESHIKO JAPAN|FIFA 女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド 2023 JFA|公益財団法人日本サッカー協会

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NADESHIKO JAPAN|FIFA 女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド 2023 JFA|公益財団法人日本サッカー協会