文野 紋(ふみの あや、1996年9月1日 - )は、日本の漫画家、イラストレーター。神奈川県出身。2020年、『月刊!スピリッツ』(小学館)に掲載された『君の曖昧』でデビュー。2023年より『サイコミ』(Cygames)にて、いつまちゃんの原作による『感受点』を連載。

来歴

生い立ち

1996年9月1日、神奈川県にて誕生。横浜の田舎で暮らす。幼稚園のころより絵を好み、家族の絵を描いたり、小学1年から読み始めた『ちゃお』(小学館)の真似をして描いたりしていた。漫画好きな兄からも影響を受け、小学生のころの夢はゲームクリエイターであった。そのころに星新一にハマり、友人と小説を交換して過ごしていた。兄が大の読書好きであったため、「お互いに小説を書いたあと、交換して読む」といったことを小学3年くらいのころに行い、それが初めての創作であった。

中学・高校時代

中学生になり、勉強を楽しいと感じていた文野は、理系の研究者を目指そうと考えていた。中学3年の時に、『週刊少年ジャンプ』(集英社)に投稿をする。冨樫義博の『幽☆遊☆白書』が好きだったことにより、投稿作は「ヤンキー主人公のラブコメマンガ」という内容であった。落選した際に、画塾に行くことを決意。村田雄介の『ヘタッピマンガ研究所R』のインタビューを真剣に読んでいたが、自身で漫画を制作することは、中学3年以降は行っていなかった。

高校生になりアルバイトを始めた文野は、そのお金で高校2年から画塾に通う。文野によると、絵の上達を願う一心で、アルバイトを頑張ることができたという。それにより「背景、バース、鉛筆画」が上達し、「ひとつのものを最後まで仕上げるのがとても好きになった」という。このころは美大や芸大を目指しておらず、海洋研究開発機構で深海生物の研究をすることに憧れていたため、理系へと進む。生物より物理が得意になった文野は、将来エンジニアとして一生を生きられるか考えた時に、「できないかも」と思っていた。「絵を描くのにもっと時間を割きたいな」と考え、高校3年になる前に画塾を辞め、美大予備校に通い始める。自由な絵を描きたくなった文野は油絵を学んだ。そして周囲の勧めもあり、美大を受験しようと考える。このころからTwitterでイラストの発表を開始。

イラストレーターから漫画家へ

現役、浪人と志望校に不合格となり、アルバイトをしながら2浪目となったころ、Twitterにあげたイラストがバズったことにより、翔泳社の「ILLUSTRATION」シリーズで取り上げられ、小説の表紙やポスターなどのイラストの仕事の依頼が入るようになる。この時の名義は「フミヤぶん」であった。

20歳まで東京芸術大学の美術学部油画専攻を目指して浪人していた。油絵が唯一の取り柄だと考えていた文野であったが、3回目の受験の不合格を受けて「経済的にも浪人生活を続けられない」と感じ、美大受験を諦めてフリーターとして生活し、2年が経過した。高校卒業までは、頑張れば絵や勉強が得意でいられたことから、「クラスのちょっと凄いヤツ」だと自覚していた文野にとって、大学の不合格という挫折は大きいものであった。22歳のその時期にはアルバイトから帰ると「自分と同じく腐った人間が世間に毒を吐く生配信」を視聴し、ぼんやりと過ごす生活を送っていた。

大学受験に失敗してフリーターをするより、イラストレーターだけでは生活ができないからフリーターをしているといった方が聞こえがよいと考えていた文野は、イラストの仕事に対して、世間に対する言い訳だと考えていた。しかしイラストで生活することは無理だと考えていた文野は、知り合いのイラストレーターがTwitterに漫画を投稿して、読まれていたところを目撃し、「マンガって見てもらえるんだ」と考える。「油絵をやめて目標を失っていた」という文野は、何かに挑戦したい気持ちと、描く仕事で食べていきたいことからイラストレーター以外のことを行おうと考え、漫画を載せればバズるかもという思いもあり、漫画を描いた。漫画家には「普通にありそうな名前が多い印象」と考えた文野は、予備校時代の恩師に「文野紋」と名づけてもらい、漫画家としての名義を改名する。

予備校時代に『ミューズの真髄』の舞台である高円寺を初めて訪れる。文野はGOING STEADYや大森靖子の曲を聴いていたことにより高円寺に憧れを抱き、漫画家として駆け出しのころには、高円寺で暮らしていた。

デビュー

「これまで描いた油絵やデッサン」を捨て、気分を変えていくうちに、Twitterで漫画が評判になった。文野の場合は出版社の方から依頼を受け、商業誌で漫画を描くようになった。描くなら好きな雑誌で描きたいと考えた文野は、『月刊!スピリッツ』(小学館)の新人賞に投稿して、『Mへのラブレター』が佳作に選ばれ、「やわらかスピリッツ」(同)に掲載となる。2020年に『君の曖昧』が『月刊!スピリッツ』に掲載され、デビューを果たす。Twitterにも「彼氏が女装趣味だった話」として投稿されている同作は、文野が漫画に詳しくなかったこともあり、ネーム作りに難航した。悩んでいた時期にCOMITIAに初めて足を運び、衝撃を受ける。そこで強く印象に残った作品として、たいぼくの『ブルーモーメントの娘たち』を挙げている。SNSで10万いいねを得た作品のリメイク『呪いと性春』を同誌に掲載。デビューから約1年の期間で、同作を表題作とした短編集を発売。

商業誌用のネームと並行してCOMITIAで描いていた『呪いと性春』を『コミックビーム』(KADOKAWA)の清水編集長が手に取り、それがきっかけで2021年より『ミューズの真髄』を連載するようになる。同作で連載デビューを果たす。同作の第1話を「美大コンプの女が裸足で家を飛び出す話」としてTwitterで公開したところ、1.3万リツイートの反響を得る。2023年2月、同作が最終回を迎える。

2023年、『サイコミ』(Cygames)にて、いつまちゃんの原作によるオムニバスホラーの『感受点』の連載を開始。

作風

ライターの古林恭によると、「どこか歪(いびつ)だが美しいキャラクター」を描いている。

文野が「散らかった部屋」や「汚い部屋」を好んで描く理由は、「生活感を描くのが好きだから」であり、「生活感を描くと俄然、リアリティーが出て」くると考え、「リアルな部屋に住む”漫画の主人公にならないような主人公像”を描きたい」と話している。

人物

ぷよぷよが趣味の一つで、日に10時間プレイしていた時もあり、女子では日本上位ランカーである。セガ公式「第1回 ぷよぷよレディースカップ」でベスト16になったことがある。

影響を受けた作品など

少年漫画や少女漫画、青年漫画など、どれも好んで読んでいるという。影響を受けた作品に高屋奈月の『フルーツバスケット』、好きな少年漫画に冨樫義博の作品を挙げている。文野によると、青年誌の雰囲気を持つ冨樫の『レベルE』を読み、「こんな面白いマンガってあるんだ!」と衝撃を受け、そこから青年誌にハマり、岩明均の『寄生獣』などを読んだ。

好きな画家はエリザベス・ベイトンとセシリー・ブラウンである。

ドキュメンタリーを観ることも趣味で、「リアルなドキュメンタリーが面白い」という。「テレビ局の漫画を描きたい」と考え、それについて調べていた文野は、東海テレビ放送の『さよならテレビ』というドキュメンタリーに出会ってハマり、影響を受けたと話している。

作品リスト

連載

  • ミューズの真髄(『月刊コミックビーム』2020年10月号 - 2023年3月号、全3巻) - 初連載作品
  • 感受点(原作:いつまちゃん、『サイコミ』2023年9月11日 - 2024年6月3日、全1巻)

読み切り

  • Mへのラブレター(「やわらかスピリッツ」2019年6月28日) - スピリッツ賞佳作
  • 君の曖昧(『月刊!スピリッツ』2020年3月号) - デビュー作
  • 血の領域(『月刊!スピリッツ』2020年7月号)- 『呪いと性春 文野紋短編集』収録時には「毒は廻る」に改題
  • ドキドキ★ZOOM(『ビッグコミックスピリッツ』2020年35号) - Twitterで発表したイラストをもと描いたショート作品、『呪いと性春 文野紋短編集』収録時には「秘密の花園PINK」に改題
  • 呪いと性春(『月刊!スピリッツ』2020年11月号、2020年12月号) - 前後編、『呪いと性春 文野紋短編集』収録
  • 僕ら地獄の逃避行(「やわらかスピリッツ」2020年12月26日) - 短編集発売記念読み切り、『呪いと性春 文野紋短編集』収録
  • 神様の心臓(COMITIA頒布作品) - 『呪いと性春 文野紋短編集』収録
  • 序幕(『ビッグコミックスピリッツ』2021年7号)- 『呪いと性春 文野紋短編集』収録
  • 君には才能があるから(『月刊コミックバンチ』2023年11月号付録「死役所公式アンソロジー」)
  • 逆情。(『ビッグコミックスペリオール』2024年2号)
  • 下北哀歌。(『ビッグコミックスペリオール』2024年7号)

その他

  • 文野紋のドキュメンタリー日記 〜現実(リアル)を求めて〜(「logirl」2022年7月27日 - )
  • イラスト(『CINEMATIC ILLUSTRATION 心を揺さぶる瞬間を描く新世代のイラストレーター』収録、2022年)
  • 非日常な彼女 イラスト(『月刊!スピリッツ』2023年4月号)

出典

外部リンク

  • 文野 紋/ふみのあや (@bnbnfumiya) - X(旧Twitter)

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